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退職代行の利用率は、2026年に入って統計的な転換点を迎えた。パーソル総合研究所が2025年12月に公表した調査では退職経験者の5.1%が利用し、マイナビの2024年調査では20代に限れば18.6%に達している。本記事は体験談ではなく、3つの公的調査とアルバトロス15,934名分データを突き合わせ、利用者像・利用理由・企業側の反応・業界地図を中立に整理する。個別事案については弁護士にご相談ください。
この記事の要点
- 退職経験者全体で5.1%(パーソル総研2025/12)、20代では18.6%(マイナビ2024)が利用。対象母集団の違いで数値が大きく変わるため出典確認が必要
- 利用者の6割が20代・6割超が勤続半年未満。「上司への恐怖心」「ハラスメント」「心身の不調」が主要理由で、緊急脱出ボタンとして機能している
- 企業は「人手不足で拒めない層」と「非弁業者は取り合わない30.4%」に二極化。モームリ事件以降、業者の合法性確認が不可欠な局面になった
2026年の転換点:3つの調査が示す業界変化
2026年は、利用者調査・企業側調査・業界事件の3つが同時期に動いた。
パーソル総合研究所「働く10,000人成長実態調査」(2025年12月)では、退職経験のある正社員のうち5.1%が退職代行を利用したと回答した(パーソル総研 2025/12/2)。「すぐに離職した」と答えた層に限れば42.3%が利用しており、急いで職場を離れる手段として使われている実態が浮かぶ。利用理由は「上司への恐怖心」28.8%、「心身の不調」25.0%が上位だった。
東京商工リサーチが2025年6月に公表した企業アンケートでは、大企業(資本金1億円以上)の15.7%が「退職代行経由の退職を経験した」と回答した(TSR 2025/6)。利用者の年代構成は20代60.8%、30代26.9%で、30代までで全体の87.7%を占める。
最新のTSR調査(2026年4月)では、企業の75.3%が「採用環境が厳しい」と回答する一方で、「非弁業者からの連絡には取り合わない」とする企業が30.4%に達している(TSR 2026/4 採用/TSR 2026/4 非弁30.4%)。
3つの調査を並べると「退職代行は一般化した」と同時に「合法性を問う企業が3割に達した」という二重の動きが見えてくる。
調査の母集団比較
数字を引用するとき、調査対象の違いを確認しないと誤読を生む。以下に整理する。
| 調査 | 対象 | 主要数値 |
|---|---|---|
| パーソル総研2025/12 | 退職経験のある正社員 | 利用率5.1% |
| マイナビ2024 | 直近退職した20代 | 利用率18.6% |
| TSR2025/6 | 大企業(資本金1億円以上) | 経験あり15.7% |
| TSR2026/4 | 企業全般 | 非弁拒否30.4% |
| アルバトロス | 同社利用者15,934名 | 20代60.9% |
同じ「利用率」でも「退職経験者全体」か「直近退職した20代」かで3倍以上の差が出る。本記事では数値ごとに出典と対象を明記している。
誰が使っているのか:年代・勤続・業界
利用者の属性は、年代と勤続年数の2軸で顕著な偏りがある。
退職代行運営大手アルバトロスが2025年に公表した利用者15,934名分のデータでは、20代が60.9%を占めた(PR TIMES アルバトロス)。TSR2025/6の大企業調査でも20代60.8%とほぼ同じ数字が出ており、母集団が異なる2つの調査で傾向が一致している。
| 年代 | アルバトロス | TSR2025/6 |
|---|---|---|
| 20代 | 60.9% | 60.8% |
| 30代 | 26.1% | 26.9% |
| 40代以上 | 13.0% | 12.3% |
勤続年数でいっそう際立つのが「半年未満63.2%」(アルバトロス)という数字だ。入社1年以内の退職が利用者の3分の2を占める。試用期間中・新卒入社後・転職直後という局面で、正面から言い出しにくい状況に置かれた人が多いことが背景にある。新卒早期離職の判断軸については新卒1ヶ月で辞めたい場合の判断軸を参照してほしい。
業界別では、マイナビ2024年調査(企業側)で「金融・保険・コンサルティング」31.4%、「IT/通信」29.8%が上位2業種だった(マイナビ 2024/10/3)。SES契約特有の客先常駐ストレスと長時間労働がIT業界の数字を押し上げている面がある。SES退職についてはSESエンジニアの退職代行事情で詳述している。
雇用形態は正社員が中心だが、派遣・契約社員での利用も増えている。派遣特有の中途解約問題は派遣の退職代行を参照。
なぜ使うのか:「恐怖・ハラスメント・不調」の3層構造
複数調査を横断すると、利用理由は「職場環境への恐怖」「心身の限界」「対話不能な関係」の3層に整理できる。
| 順位 | 理由 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 1 | ハラスメント被害 | 33.9% | アルバトロス |
| 2 | 上司への恐怖心 | 28.8% | パーソル総研 |
| 3 | 心身の不調 | 25.0% | パーソル総研 |
| 4 | 退職を言い出せない | — | マイナビ |
| 5 | 引き止めへの不安 | — | マイナビ |
ハラスメントが3分の1を占める点は重い。退職代行が「労働環境の最終避難先」として機能している構図であり、「楽に辞めたい」という動機より「追い詰められて逃げる」という動機の方が実態に近い。パワハラと慰謝料の法的関係はパワハラ慰謝料の判例まとめで整理している。
「心身の不調」25.0%の背景には適応障害・うつ症状などで出社困難になっているケースが含まれる。傷病手当金など給付制度との関係は傷病手当金と退職で扱っている。なお医療判断は本記事の対象外であり、診断や治療については主治医にご相談ください。
「引き止め」と「退職届の書き方」については退職引き止めの断り方・退職届の書き方を参照。
利用後の実態:完了率・トラブル・転職への影響
「退職自体はほぼ完了する」が、付随する問題は別物だ。
各社公表値では退職完了率は98〜100%とされている。「辞められなかった」ケースは現時点で稀だが、これは「退職届の受理」までの数字であり、有給消化・未払い残業代・退職金などの付随問題は含まれない。詳細は退職金トラブル・有給消化を参照。
起きやすいトラブルを類型化すると次の3つになる。
| 類型 | 発生原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 会社からの直接連絡 | 民間型業者が交渉できない/会社が業者を無視 | 弁護士法人型・労組型を選ぶ |
| 損害賠償の示唆 | 引き止め目的の威嚇が大半 | 損害賠償判例参照 |
| 懲戒解雇通告 | 退職前の無断欠勤との関係 | 懲戒解雇リスク参照 |
業者選びと事前の段取りで大半は回避できる。失敗事例の整理は退職代行の失敗・トラブル事例にまとめている。
「家族にバレないか」「離職票が届くか」「次の転職で不利にならないか」という利用前の3大不安については、退職代行で親バレを防ぐ・退職代行と失業保険で扱っている。
企業側の反応:二極化する「受容」と「拒否」
利用者側だけでなく、企業側の意識データが2026年に大きく動いた。
大企業の15.7%が退職代行経由の退職を経験済みで、複数回経験した企業では対応手順を設ける動きも出始めている(TSR 2025/6)。一方、企業の75.3%が「採用環境が厳しい」と答えており(TSR 2026/4)、退職代行を強硬に拒否する余裕がない企業が増えている。
「非弁業者は取り合わない」とする企業30.4%は、弁護士法72条を根拠としている。同条は弁護士でない者が報酬目的で法律事務を扱うことを禁じており(e-Gov 弁護士法72条)、民間型業者からの「有給消化を希望する」「退職金を確認したい」といった連絡を非弁行為とみなして拒否するケースがある。詳細は非弁行為の解説を参照。
結果として「人手不足で退職代行を受け入れる層」と「合法性を理由に民間型を拒否する層」に二極化が進んでいる。
業界地図の再編:モームリ事件以降の合法性スコア
モームリ事件は、退職代行業界の合法性ラインを再定義する出来事になった。
2025年10月以降、退職代行モームリの関係者が弁護士法違反容疑で捜査対象となり、2026年に入り在宅起訴に至っている(TSR モームリ逮捕)。運営体制を変更して営業再開する動きも報じられており(TSR モームリ営業再開)、事件の全体像はモームリ事件の全貌で時系列整理している。
さらに2026年2月24日には弁護士法人みやびの所属弁護士がモームリ事件関連で弁護士法違反罪により在宅起訴された(時事通信 2026/2/24)。弁護士法人型だからといって自動的に安全とはいえない点を示す事案として、業者の選択時は最新報道の確認が必要だ。
⚠️ 編集部注記:弁護士法人みやび(要警戒)
2026年2月24日、所属弁護士がモームリ事件関連で在宅起訴(時事通信2026/2/24)。利用検討時は最新報道をご確認ください。
2026年4月時点の合法性スコア別整理を下表に示す。
| 類型 | 合法性スコア | 備考 |
|---|---|---|
| 弁護士法人型(適法運営) | ★★★★★ | 法律事務すべて可 |
| 弁護士法人型(要警戒) | ★★★ | みやびは2026/2在宅起訴 |
| 労組直営型 | ★★★★ | 団体交渉可 |
| 民間型 | ★ | 伝達のみ・交渉不可 |
| 民間提携型 | ★〜★★ | 提携実態を要確認 |
3類型の詳細比較は退職代行3タイプ完全比較を参照してほしい。
まとめ:統計が示す2026年の実像
退職代行は「特殊な選択肢」から「一定数が使う手段」に変わった。20代退職者の2割が利用し、利用者の6割が勤続半年未満という実態は、若い世代がより早く「限界点」を判断している構図を示している。同時に企業の3割が非弁業者を拒否する姿勢を明示しており、業者の合法性選択が退職の成否に直結する局面になっている。
次のステップとして迷っている場合は、まず退職代行のメリット・デメリットを整理した退職代行のメリット・デメリットを確認してから、労組型か弁護士法人型かを判断することを検討してほしい。
会社とのやり取りを自分でしたくない場合、労働組合型の退職代行なら団体交渉権にもとづき有給消化や退職日の調整を交渉できます。
本記事は2026年6月時点の公的調査・報道に基づく。最新動向は各出典先で確認してほしい。個別事案については弁護士にご相談ください。
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