※本記事には広告(PR)が含まれます。個別事案の判断は弁護士にご相談ください。
「公務員は退職代行が使えない」というのは誤解です。退職代行の利用自体は公務員でも可能ですが、民法627条の「2週間ルール」はそのまま適用されません。公務員の退職には任命権者の承認という公法上の要件があり、民間型・労組型では構造的に対応しきれない場面が生じます。そのため、公務員の退職代行は弁護士法人型が現実的な選択肢です。
この記事の要点
- 公務員の退職は国家公務員法第61条・地方公務員法に基づく任命権者の承認が必要。民法の自由退職原則は直接適用されない。
- 民間型は「通知のみ」で退職手続きが完結しない。労組型は公務員の公法的枠組みに団体交渉権が機能しにくい。弁護士法人型が法律事務一般を取り扱える唯一の選択肢。
- 自衛官は自衛隊法第40条で承認拒否規定がある。21日以上の無断欠勤は懲戒免職の典型事例。いずれも弁護士介入で対処できる。
公務員の退職に「任命権者の承認」が必要な理由
公務員の退職に任命権者の承認が必要な理由と、民間労働者との違いを条文で確認します。
国家公務員法第61条はこう定めています。
職員の退職、免職及び休職は、人事院規則の定めるところにより、任命権者が、これを行う。
民間労働者は民法627条で「申入れから2週間で雇用契約が終了する」と定められています。これに対し、国家公務員の退職は任命権者の処分行為として整理されるため、職員側の意思表示だけでは退職は成立しません。地方公務員についても地方公務員法第28条に基づく条例・規則で、任命権者の承認手続きが定められています(出典:e-Gov 地方公務員法)。
退職実務の手続きは人事院規則8-12(職員の任免)と人事院の運用通知に明文化されており(出典:e-Gov 人事院規則8-12、出典:人事院通知 平成21年人企第532号)、職員→所属長→人事課→任命権者という承認ラインを経由する必要があります。月末退職を希望する場合、上申から発令まで1〜2か月前には退職願を提出するのが慣例です。
退職代行の3類型と公務員への適合性
退職代行には民間型・労組型・弁護士法人型の3種類がありますが、退職代行を公務員が利用する場合、類型ごとの法的な限界が明確に異なります。
民間型は職員本人の退職意思を任命権者に伝えるだけのサービスです。通知だけでは退職が法的に完了しない上、退職願の差戻し・退職日調整・服務関連の確認等でやり取りが生じた場合、弁護士でない者が報酬を得て法律事務を取り扱う行為となり、弁護士法72条違反(非弁行為)のリスクが現実化します(出典:e-Gov 弁護士法)。
労組型は民間企業の退職代行で実績を持ちますが、公務員の労働関係は労働組合法ではなく国家公務員法・地方公務員法・人事院規則等の公法体系で規律されます。一般職の国家公務員は労働組合法上の労働組合を組織できず、民間の労組型退職代行が「団体交渉権」を背景に交渉する仕組みは公務員退職に機能しにくい構造です。
弁護士法人型は弁護士法3条で「法律事務一般」を業務として認められているため、任命権者・人事課との退職手続きに関する代理・連絡・書面作成を合法に取り扱えます。弁護士事務所による国家公務員・地方公務員の退職代行事例も公表されています(出典:金沢合同法律事務所 国家公務員退職代行事例)。
なお、2026年2月24日には退職代行「モームリ」運営の谷本慎二氏・谷本志織氏夫妻が弁護士法違反で起訴され、同日に弁護士法人みやびの佐藤秀樹弁護士・弁護士法人みやびも在宅起訴されています(出典:時事通信 2026/2/24、出典:TSR モームリ報道)。
⚠️ 編集部注記:弁護士法人みやび(要警戒)
2026年2月24日、所属の佐藤秀樹弁護士および弁護士法人みやびがモームリ事件関連で弁護士法違反罪により在宅起訴されています。法人自体への処分は2026年6月時点では出ていません。利用を検討する場合は最新動向を確認した上で判断してください。
公務員退職という「公法的処分行為が必要な領域」では、民間型・提携型のリスクは民間労働者の場合より大きくなります。詳細はモームリ事件の全貌で整理しています。
職種別の退職規定(自衛官・教員・警察官・準公務員)
公務員といっても職種ごとに退職規定は異なります。特殊公務員の主要な論点を確認してください。
自衛官は自衛隊法第40条で退職が規定されており、任命権者は「自衛隊の任務の遂行に著しい支障を及ぼす」と認めるときは退職の承認を拒否できます(出典:e-Gov 自衛隊法)。実務では45日前の上申ルールが運用されており、承認拒否事例も報告されています(出典:自衛官の人権弁護団)。民間労働者の2週間ルールが適用されないどころか承認拒否権限がある点が他職種と大きく異なり、争点化した場合は弁護士の介入が必要です。
教員(公立)は教育公務員特例法の適用を受け(出典:e-Gov 教育公務員特例法)、任命権者は都道府県・政令指定都市の教育委員会です。校長は任命権者ではなく、最終的な発令は教育委員会から出されます。年度途中の退職は後任配置の問題で時間を要する傾向があります。精神疾患・過重労働による出勤困難の場合は、まず病気休暇・病気休職の活用を検討した上で退職判断を進めるのが現実的です。
警察官は地方公務員として地方公務員法の適用を受けつつ、警察法・国家公安委員会規則の管理下にあります(出典:e-Gov 地方公務員法)。装備返納・守秘義務・退職後の再就職規制等で確認事項が多く、弁護士法人型で人事課対応を進めるのが現実的です。
準公務員(独立行政法人職員・国立大学法人職員等)は身分上は民間雇用契約で、労働基準法・労働契約法が適用されます。退職そのものは民法627条ベースで処理されますが、法人ごとに内部規程で承認ルールを設けている場合があり、事前確認が必要です。
公務員特有のリスクと対処法
民間退職にはない公務員固有のリスクを整理します。
21日以上の無断欠勤が継続すると懲戒免職処分の対象となりえます。人事院の懲戒処分の指針では正当な理由のない21日以上の無断欠勤を懲戒免職の典型事例として例示しており(出典:人事院通知 平成21年人企第532号)、懲戒免職は退職金不支給・原則2年間の再任用制限を伴います。出勤困難な状況でも、弁護士経由で正規の退職手続きに乗せる方が職員本人の利益を守る選択です。懲戒免職の論点全般は退職代行で懲戒解雇になる可能性は?で整理しています。
損害賠償については、労働基準法16条で労働契約に附随する賠償予定の禁止が定められており、不当な違約金請求は無効とされる場面が多いものの、個別事案の判断は弁護士が必要です。奨学金返還条件付きで採用された自衛官・防衛医大・自治医大等の卒業生は途中退職時に返還請求が論点となる場合があります。
国家公務員の退職後の再就職規制は内閣人事局が所管しており(出典:内閣人事局 退職管理)、管理職経験者を中心に届出義務が課されます。また公務員は雇用保険の被保険者でないため、民間の失業給付は受給できません。国家公務員退職手当法に基づく退職手当・失業者の退職手当の枠組みが代替となります。退職後の生活設計は退職代行を使った後の失業保険・給付金も参照してください。
弁護士法人型の退職代行を選ぶポイント
公務員の退職代行を依頼する際の確認事項を整理します(根拠:弁護士法3条・72条、出典:e-Gov 弁護士法)。
まず弁護士法人または弁護士事務所の運営であることを公式サイトで確認してください。法人格・所属弁護士会・登録番号が明示されているかが判断の基準です。提携弁護士に「取り次ぐ」だけの民間型は公務員退職代行には不向きです。次に公務員対応実績の有無を公式サイトのコラム・事例欄で確認します。自衛官・教員・国家公務員等の記載があるかが目安です。料金は弁護士型で5万〜10万円程度が一般的な目安です。着手金・基本報酬・成功報酬の区分と訴訟移行時の追加費用を契約前に書面で確認してください。料金の詳細は退職代行の費用相場と料金比較で整理しています。
未払い・損害賠償・ハラスメントなど法的な交渉や請求が絡む退職では、弁護士法人型の退職代行が選択肢のひとつです。
弁護士事務所の選び方の詳細は弁護士の退職代行おすすめ4選も参照してください。
FAQ(公務員向け独自Q&A)
Q. 自衛官は退職代行で辞めることができますか?
自衛隊法第40条に基づき、任命権者は「自衛隊の任務の遂行に著しい支障を及ぼす」と認めた場合に退職の承認を拒否できます(出典:e-Gov 自衛隊法)。45日前の上申慣行や承認拒否事例も報告されており、退職拒否が論点化した場合は弁護士の介入が必要です。民間型・労組型では対応しきれない領域です。
Q. 公務員が退職代行を使うと、退職証明書に記録されますか?
退職代行の利用履歴が人事記録や退職証明書に記載される仕組みはありません。任命権者承認による正規の退職である限り、自己都合退職として処理されます。ただし無断欠勤が継続して懲戒免職・分限免職に発展した場合は経歴に残るため、正規ルートで退職手続きを進めることが重要です。
参考文献(一次情報)
- e-Gov 国家公務員法 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000120
- e-Gov 地方公務員法 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000261
- e-Gov 自衛隊法 https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000165/
- e-Gov 教育公務員特例法 https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000001
- e-Gov 弁護士法 https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000205
- e-Gov 人事院規則8-12 https://laws.e-gov.go.jp/law/421RJNJ08012007
- 人事院通知 平成21年人企第532号 https://www.jinji.go.jp/seisaku/kisoku/tsuuchi/08_ninmen/0801000_H21jinki532.html
- 内閣人事局 退職管理 https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/jinji_j.html
- 自衛官の人権弁護団 退職拒否事例 https://jieikan-jinken.com/history/entry-42.html
- 金沢合同法律事務所 国家公務員退職代行事例 https://kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/2023102711239.html
- 時事通信 2026/2/24 https://www.jiji.com/jc/article?k=2026022401063&g=soc
- 東京商工リサーチ モームリ報道 https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202359_1527.html
免責:本記事は2026年6月13日時点の公開情報をもとに編集部が独自整理したものです。法律の解釈・運用は事案や時期によって変動します。個別事案の判断は弁護士にご相談ください。
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