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退職代行で懲戒解雇になる可能性は?労契法15条・16条と最新判例(2025年大阪地判)から解説

※本記事には広告(PR)が含まれます。紹介する業者からアフィリエイト報酬を受け取る場合がありますが、編集部の評価(合法性スコア・推奨順位)は利害関係から独立して算出しています。

先に結論です。退職代行の利用そのものが懲戒解雇事由になることは、労働契約法15条・16条の二重規制のもとでは法的に成立しません。2025年大阪地判R7.1.27(M社事件)でも、退職代行利用は引継ぎ義務違反にあたらないと判示されています。ただし、会社が損害賠償や懲戒処分を示唆し始めた段階では、弁護士法人型の退職代行または弁護士相談に切り替えることが安全です。

この記事の要点

  • 退職代行 懲戒解雇の組み合わせは、労契法15条・16条の「客観的合理性」「社会通念上の相当性」要件をいずれも満たさず、一般論として成立しない。
  • 損害賠償が認容されたケイズインターナショナル事件(東京地判平4.9.30、約70万円)は特定客先プロジェクト用採用+入社直後の離脱という特殊事案で、一般的な退職への射程は狭い。
  • 懲戒処分・訴訟リスクを示唆された場合は、弁護士法人型の退職代行が損害賠償への反論・訴訟代理まで対応できる選択肢となる。

目次

退職代行と懲戒解雇——労契法15条・16条の二重規制

退職代行 懲戒解雇のリスクが語られる根拠を、条文から直接確認します。

労働契約法第15条は次のように定めています。

使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

出典:e-Gov 労働契約法第15条

懲戒「解雇」になると、第16条の規制も重なります。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

出典:e-Gov 労働契約法第16条

懲戒解雇は「懲戒」かつ「解雇」であるため、15条と16条の両方をクリアする必要があります。退職代行の利用は、労働者が退職権を行使する一態様にすぎません。退職権の行使方法そのものを懲戒事由とする就業規則はほぼ存在せず、仮に存在しても相当性を欠くため15条で無効と評価されます。

厚生労働省・中央労働委員会の懲戒解雇関連資料では、懲戒解雇は「就業規則違反の中で最も重い処分」と位置付けられ、適用には横領・暴行・重大な経歴詐称など刑事罰級の非違行為が前提とされています(出典:厚労省 中労委 懲戒解雇資料PDF)。退職代行の利用は、こうした類型と性質が異なります。


懲戒解雇が有効になる4要件——退職代行利用での該当性

懲戒解雇が裁判で有効と認められるためには、判例法理上、次の4要件が必要とされています。

要件 内容 退職代行利用での該当性
① 規定の明確性 就業規則に懲戒事由を明記 × ほぼ存在しない
② 周知性 就業規則が労働者に周知されている
③ 社会通念上の相当性 処分が行為の重大性に見合う × 退職権の行使は労働者の権利
④ 適正手続 弁明機会の付与など手続的公正 × 退職完了後は確保が困難

①については、「退職代行の使用」を懲戒事由として明記した就業規則は実務上ほぼ存在しません。仮に新設されても、退職権の行使を制約する条項として無効と評価される構成です。

③については、民法627条第1項が「雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる」と定めており(出典:e-Gov 民法第627条)、権利の行使方法を理由に最も重い処分を科すことは相当性を欠きます。

④については、退職代行を使った時点で雇用関係は終了に向かっており、出社しない労働者への弁明機会の確保は実質的に困難です。

一般論として、懲戒解雇が有効と認められた判例では、横領・暴行・重大な経歴詐称・営業秘密漏洩など刑事罰級の非違行為が前提となっています。退職代行の利用は、こうした類型と質的に異なります。


退職代行 懲戒解雇に近づくレアケース3類型

退職代行の利用は懲戒解雇事由にならないという整理が前提ですが、退職代行とは無関係に存在する別の非違行為が重なった場合は論点が変わります。

類型A:機密情報の持ち出しを伴う退職

退職前後に営業秘密・顧客リスト・技術データを持ち出した場合は、不正競争防止法違反や就業規則上の秘密保持義務違反が懲戒事由となります。退職代行はこうした違反行為を消す効果を持ちません。

類型B:在職中の競業避止義務違反

在職中に同業他社と接触し、退職代行で即日離脱するパターンです。在職中の競業行為自体が懲戒事由となります。

類型C:長期無断欠勤後の利用

懲戒事由となるのは「長期無断欠勤」であり、退職代行の利用そのものではありません。退職代行は連絡経路として機能するに過ぎず、それまでの非違行為を遡及的に消すものではありません。

上記3類型は「退職代行が原因で懲戒解雇」ではなく「退職代行とは無関係に存在する非違行為が原因」です。論点の切り分けが重要で、個別事案については弁護士にご相談ください。


判例で読む損害賠償リスク——懲戒解雇とは別の論点

懲戒解雇と損害賠償は根拠条文も要件も全く異なる話です。整理すると次のとおりです。

項目 懲戒解雇 損害賠償請求
根拠条文 労契法15条・16条 民法415条・709条
主体 使用者の処分 民事上の金銭請求
立証責任 使用者 請求する側(多くは使用者)
退職代行利用との関係 事由として成立しない 別個に要件を満たせば可能性あり

会社が損害賠償を主張する場合の根拠は主に民法415条(債務不履行・引継ぎ義務違反など)と民法709条(不法行為)です。ただし「損害の発生」と「行為と損害の因果関係」の立証は会社側に重い負担があります。

なお、労働基準法16条は違約金・損害賠償額の予定を禁じています。

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

出典:e-Gov 労働基準法第16条

入社時の誓約書に「3年以内退職なら違約金○○万円」と書かれていても、この条項を根拠に無効と評価される構成です。

ケイズインターナショナル事件(東京地判平成4年9月30日)の特殊性

退職に伴う損害賠償が認容された判例として引用されるのが、この事件です。インテリアデザイン会社が特定客先プロジェクト用の常駐要員として採用した従業員が入社直後に欠勤・退職し、客先との月額60万円・2年間の契約が解約になったという事案で、引継ぎ義務違反を一部認めて約70万円が認容されました。

ポイント 内容
認容額 約70万円(請求額に対し限定的)
事案の特殊性 特定客先プロジェクト用採用+入社直後の離脱という稀有な事案
立証 会社側が具体的な逸失利益を個別に積み上げ

引継ぎ拒否だけでは認容されておらず、特定客先プロジェクト用採用という特殊な前提があって初めて損害が認容された事案です。一般的な退職に対して、この判例を直接の根拠に高額の損害賠償を命じられる構成は想定しにくい状況です。

M社事件(大阪地判令和7年1月27日):退職代行利用は引継ぎ義務違反にならない

2025年に出された判例で、退職代行の法的位置付けを正面から評価した点に意義があります。会社側が「退職代行での離脱は信義則違反であり引継ぎを怠った」として損害賠償を請求しましたが、棄却されました(参考解説:アイデム コラム)。

争点 裁判所の判断(要旨)
退職代行の利用は信義則違反か 退職権の行使方法として違法とはいえない
直接対話しない退職は引継ぎ義務違反か 書面・データによる引継ぎで足りる
退職代行利用と損害との因果関係 立証不十分

ケイズインターナショナル事件(平成4年)と対比すると、M社事件(令和7年)はより現代の労働環境を踏まえ、退職代行という手段そのものを評価した点が異なります。

嵩原安三郎弁護士のYouTubeでも、退職代行の利用そのものを理由とした懲戒解雇は法的に成立しにくいという見解が公開されています(参考:嵩原安三郎弁護士YouTube)。

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損害賠償・懲戒処分を示唆された場合の対処

会社が損害賠償や懲戒処分を示唆し始めた段階では、退職手続きの問題ではなく法的紛争の問題になります。対処の判断軸は業者の種別によって変わります。

民間型の退職代行は「本人の退職意思を伝える使者」の範囲に限られ、法的交渉はできません。労組型は労組法6条の団体交渉権の範囲で労働条件の交渉が可能ですが、損害賠償への反論や訴訟代理は弁護士法72条の非弁行為に該当するため対応できません(出典:e-Gov 弁護士法第72条)。

損害賠償・訴訟リスクへの対応:ガイア総合法律事務所

項目 詳細
運営型 弁護士法人
料金 成功報酬20〜30%(公式で要確認)
合法性スコア ★★★★★(5/5)
対応範囲 損害賠償への反論・内容証明への応答・労働審判・訴訟代理
こんな状況に 損害賠償をほのめかされている/内容証明が届いた/訴訟に備えたい

ガイア総合法律事務所の公式サイトを見る →

編集部注記:弁護士法人みやび(要警戒)

知名度の高い弁護士法人ですが、2026年2月24日、所属の佐藤秀樹弁護士(および弁護士法人みやび)がモームリ事件関連で弁護士法違反罪により在宅起訴されています(出典:時事通信2026/2/24)。法人自体への処分は2026年5月時点では出ていません。利用検討の際は最新動向をご確認の上で判断してください。

2026年2月のモームリ関連報道では、民間業者と提携した弁護士が弁護士法72条の枠を超える業務に踏み込んだことが刑事リスクとして現実化しました(出典:TSR モームリ報道)。業者選定の段階から合法性を確認することが、利用者側のリスク管理にも直結します。

東京商工リサーチの調査では、大企業の15.7%が「自社社員が退職代行を使って辞めた経験がある」と回答しています(出典:TSR 退職代行調査)。利用が珍しい現象でなくなった分、業者選定の質がそのままリスク管理になります。

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まとめ:退職代行 懲戒解雇は法的に成立せず、損害賠償も射程が狭い

結論

  • 退職代行の利用そのものは、労契法15条・16条の懲戒解雇要件を一つも満たさない
  • 懲戒解雇の4要件(規定明確性・周知性・相当性・適正手続)はいずれも該当しない
  • 2025年大阪地判R7.1.27(M社事件)は、退職代行利用が引継ぎ義務違反にならないと判示
  • ケイズインターナショナル事件(東京地判平4.9.30)は特定客先プロジェクト用採用という特殊事案で、認容額は約70万円に留まる
  • 損害賠償・懲戒処分を示唆された段階では、弁護士法人型に切り替えることが選択肢となる

よくある質問

Q1. 退職代行を使ったら離職票に「懲戒解雇」と書かれることはありますか?

A. 一般論として、退職代行を使った自己都合退職で離職票に「懲戒解雇」と記載される構成にはなりません。離職票の離職理由は雇用保険法・職業安定法に基づき客観的な事実に従って記載されます。実態が自己都合退職である以上、会社が一方的に「懲戒解雇」と書いた場合はハローワークで離職理由の異議申立てが可能です。個別の対応については弁護士または労基署にご相談ください。

Q2. 損害賠償請求を受けたらどうすればよいですか?

A. 内容証明郵便や訴状が届いた段階で、当日〜翌営業日に弁護士へ相談することが安全です。訴状には答弁書提出期限があり、放置すると欠席判決で全額認容されるリスクがあります。民間型・労組型の退職代行を利用していた場合でも、損害賠償への反論は弁護士法72条との関係で弁護士の独占業務です。弁護士法人型へ切り替えるか、直接弁護士に依頼してください。個別事案については弁護士にご相談ください。


参考文献(一次情報URL)

  • e-Gov 法令検索 労働契約法(第15条・第16条):https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128/
  • e-Gov 法令検索 民法(第627条):https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089/
  • e-Gov 法令検索 労働基準法(第16条):https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
  • e-Gov 法令検索 弁護士法(第72条):https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC1000000205
  • 厚生労働省 中央労働委員会 懲戒解雇PDF:https://www.mhlw.go.jp/churoi/chyousei_jirei/dl/18.pdf
  • 大阪労働局 退職・解雇FAQ:https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/yokuaru_goshitsumon/jigyounushi/taisyoku.html
  • M社事件 大阪地判R7.1.27 解説(アイデム):https://apj.aidem.co.jp/column/2544/
  • 東京商工リサーチ 大企業の退職代行利用調査:https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201481_1527.html
  • 東京商工リサーチ モームリ報道:https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202359_1527.html
  • 嵩原安三郎弁護士YouTube(参照):https://www.youtube.com/watch?v=b7VxByK4zBo
  • 裁判所Web 判例検索:https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1

※判例引用は公開された労働判例集・裁判所Web掲載情報および公的解説に基づきますが、要旨の簡略化にあたり原文と完全に一致しない場合があります。具体的な判例の正確な内容は、最高裁判所判例集・労働判例(産労総合研究所)等の原典をご確認ください。


免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。判例の引用は要旨を簡略化しており、具体的な事実関係や訴訟戦略は事案ごとに異なります。個別事案については弁護士にご相談ください。料金・サービス内容は2026年5月31日時点の公式公表値です。最新情報は各社公式サイトでご確認ください。

最新動向に関する注記:2026年2月、弁護士法人みやびの所属弁護士1名(および両法人)がモームリ事件関連で弁護士法違反罪により在宅起訴されています(時事通信2026/2/24)。本記事では推奨候補から外しています。法人自体への処分は2026年5月時点で出ていません。

最終更新:2026年6月13日

編集部(仕事リサーチ)

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この記事を書いた人

仕事リサーチ編集部
「働き方の意思決定を支える中立調査メディア」を運営する独立系編集部です。退職代行サービス・転職エージェント・労働法・副業・給付金など、働き方にまつわる重要トピックについて、業者や弁護士事務所、転職エージェントと利害関係を持たない第三者の立場から、一次情報に基づく検証記事を発信しています。
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退職代行/転職エージェント/労働法/副業・給付金制度
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