※本記事には広告(PR)が含まれます。個別の法的判断は弁護士にご相談ください。
退職代行を分けるのは料金ではなく「会社と交渉できるかどうか」です。運営母体が弁護士法人・労働組合・民間企業のどれかで、法律上扱える業務範囲が決まります。本記事はe-Gov条文と帝国データバンク調査を根拠に、3タイプの違いを中立に整理します。
この記事の要点
- 弁護士型は慰謝料・訴訟まで対応可。料金平均は44,700円(帝国データバンク調査)。
- 労組型は有給・退職金の団体交渉まで可、慰謝料は不可。料金平均は約25,000円。
- 民間型は「退職意思の伝達」のみ。交渉に踏み込むと弁護士法72条との関係で問題が生じうる。
3タイプ一覧と業務範囲早見表
3タイプの違いは条文で線引きされています。広告の見た目ではなく、運営母体と法的根拠を確認するのが第一歩です。
| 項目 | 弁護士型 | 労組型 | 民間型 |
|---|---|---|---|
| 運営母体 | 弁護士法人 | 労働組合 | 株式会社 |
| 料金平均 | 44,700円 | 約25,000円 | 22,500円 |
| 退職意思の通知 | 可 | 可 | 可(伝達のみ) |
| 有給消化・退職日の交渉 | 可 | 可 | 不可 |
| 未払い賃金・慰謝料請求 | 可 | 不可 | 不可 |
| 訴訟代理 | 可 | 不可 | 不可 |
| 合法性スコア | ★★★★★ | ★★★★ | ★(単独型) |
| 法的根拠 | 弁護士法独占業務 | 労組法6条(団体交渉権) | 使者の範囲のみ |
料金平均は2025年10月時点の調査値(出典:帝国データバンク 2025/10/24)。
3タイプそれぞれの法的根拠
業務範囲は条文で定まっています。タイプごとの根拠と限界を整理します。
弁護士型(弁護士法人または弁護士事務所が直接運営)
弁護士法第72条は、弁護士でない者が報酬目的で法律事務を扱うことを禁じています(出典:e-Gov 弁護士法第72条)。逆にいえば弁護士は法律事務を独占的に扱える立場にあります。退職意思の通知から慰謝料請求・訴訟代理まで、ワンストップで対応できます。代表的な事務所としてフォーゲル綜合法律事務所などがあります。なお弁護士法人みやびについては後述の注記を参照してください。
労組型(労働組合が直営、または民間業者が労組と提携)
労働組合法第6条は、組合が組合員の代理人として使用者と団体交渉できると定めています(出典:e-Gov 労働組合法第6条)。これは憲法28条の労働三権に根拠を持つ権利です。有給消化・退職金・退職日の調整は交渉範囲に含まれます。ただし慰謝料請求や訴訟代理は労組の業務範囲を超えます。有給消化の具体的な交渉成功率については退職代行で有給は全消化できるで整理しています。
民間型(弁護士でも労組でもない株式会社が単独運営)
できるのは「本人の退職意思を会社に伝える使者」の役割に限定されます。会社が「退職日を延ばしたい」「有給は認めない」と条件を提示してきた場合、その対応に踏み込むと弁護士法72条との関係で問題が生じます。広告で「交渉します」「請求します」と表示している民間業者には注意が必要です。
⚠️ 一般論として、民間業者が扱えるのは「使者」の範囲までです。即日対応や料金の安さが特徴ですが、トラブル時の交渉力はありません。個別事案については弁護士にご相談ください。
料金相場と状況別の選び方
料金の安さだけで選ぶと「交渉が必要な場面で何もできない」ミスマッチが起きます。状況別に必要な業務範囲から逆算するのが安全です。
帝国データバンクが2025年10月24日に公表した「退職代行業52法人」調査では、料金平均は全体で29,410円でした(出典:帝国データバンク 2025/10/24)。弁護士事務所44,700円・労働組合約25,000円・民間業者22,500円という水準です。労組型と民間型の差は約2,500円ですが、交渉可否という決定的な違いがあります。料金差ではなく業務範囲の差で比較してください。
状況別の選び方
- 未払い賃金・残業代がある → 弁護士型(請求まで扱える)
- パワハラ・セクハラ慰謝料を請求したい → 弁護士型
- 会社から損害賠償をほのめかされている → 弁護士型(反論まで扱える)
- 有給を消化したい・退職金を交渉したい → 労組直営型(団体交渉権の範囲)
- 会社が「違約金」を持ち出しそう → 労組型以上(民間型は対応不可)
- 辞意の伝達のみで交渉不要 → 民間型でも可
なお「即日辞めたい」を最優先にして民間型に絞り込む必要はありません。労組直営型でも即日対応・24時間受付を公表している業者は複数あります(適用条件は各社公式でご確認ください)。
モームリ事件が示した「表示と実態のギャップ」
2026年2月のモームリ運営者逮捕事件以降、「労組提携」「弁護士監修」という表記だけでは安全とはいえなくなりました。表示の中身まで確認する目線が必要です。
退職代行モームリ(運営:株式会社アルバトロス)の代表夫妻は、2026年2月3日に弁護士法72条違反(非弁行為)の疑いで逮捕されたと報道各社が報じました(弁護士ドットコムニュース 2026/2/3)。逮捕は容疑段階であり、最終的な判断は公判で示される見通しです。モームリは2026年4月23日に新規受付を再開しています(ITmedia NEWS 2026/4/23)。
報道によれば、運営側は退職希望者を提携弁護士に紹介し、1人につき約16,500円の紹介料を受け取っていた疑いがあるとされます。東京地検2026年2月24日の起訴状によれば紹介人数は約174人とされています。
弁護士法は「非弁護士の側」と「弁護士の側」の双方を縛っています。第72条は非弁護士が報酬目的で法律事務を扱うことを禁止し、第27条は弁護士が非弁護士から事件の斡旋を受けることを禁止します(出典:e-Gov 弁護士法)。モームリ事件では紹介料モデルを通じて両者が同時に問われました。
⚠️ 2026年2月24日、弁護士法人みやびの所属弁護士(佐藤秀樹弁護士)および弁護士法人オーシャンの梶田潤弁護士がモームリ事件関連で弁護士法違反罪により在宅起訴されています(第一東京弁護士会 公表・時事通信 2026/2/24)。法人自体への処分は2026年6月時点では出ていませんが、利用検討の際は最新動向をご確認ください。
提携系を見極める際は次の4点を確認してください。
- 組合員資格の取得手続きと組合の所在地が明記されているか
- 弁護士関与がある場合、事務所名・登録番号・所属弁護士会まで開示されているか
- 紹介料・リファラル報酬の授受関係が透明か
- 特商法表記の住所・運営会社が公式サイトと一致しているか
→ 信頼できる業者の見極め方の詳細は退職代行の信頼性チェックにまとめています。
弁護士法人型を選ぶ際の注意点と推奨の考え方
状況別の選び方の結論として、慰謝料・残業代請求・損害賠償反論が必要なケースは弁護士法人型が有力な選択肢です。弁護士法人型の中では、紹介料モデルではない直営型を選ぶことが安全性の観点から重要です。
未払い・損害賠償・ハラスメントなど法的な交渉や請求が絡む退職では、弁護士法人型の退職代行が選択肢のひとつです。
なお補助として労組直営型も選択肢の一つです。有給消化・退職金の交渉まで含めたい場合、退職代行Jobs・退職代行ガーディアン(東京労働経済組合)・退職代行OITOMAなどが労組法6条の団体交渉権を根拠とした交渉に対応しています(料金・条件は各社公式でご確認ください)。
会社とのやり取りを自分でしたくない場合、労働組合型の退職代行なら団体交渉権にもとづき有給消化や退職日の調整を交渉できます。
まとめと補足Q&A
退職代行の3タイプは料金ではなく業務範囲で選ぶのが基本です。
- 慰謝料・残業代請求・損害賠償反論が必要 → 弁護士法人型。弁護士法72条の独占業務として対応できる。
- 有給消化・退職金交渉まで含めたい → 労組直営型。労組法6条の団体交渉権を根拠とした交渉が可能。
- 辞意の伝達のみで交渉は不要 → 民間型でも可。ただし会社が条件を提示した場合の対応は本人が担う。
モームリ事件以降は「提携の透明性」が選定の重要要素です。「弁護士監修」と「弁護士法人型直営」は異なります。「監修」は書面チェックの関係であり、案件ごとに弁護士が代理人になるわけではありません。
→ モームリ事件の全容と代替の選択肢については退職代行モームリの代わりになるサービスで整理しています。
→ 非弁行為(弁護士法72条違反)の詳しい解説は非弁行為とは何かを参照してください。
Q. 「弁護士監修」と「弁護士法人型」は何が違いますか?
「弁護士法人型」は弁護士法人または弁護士事務所が直接サービスを運営しており、案件ごとに弁護士が代理人として対応します。「弁護士監修」は業者が弁護士に書面・内容確認を依頼している関係を指し、案件ごとに弁護士が代理人になるわけではありません。慰謝料請求や損害賠償への反論が必要な場合は、監修ではなく弁護士法人型が必要です。個別事案については弁護士にご相談ください。
Q. 民間型はどういう場合に選択肢になりますか?
退職意思の伝達のみで足り、有給消化・退職金・慰謝料などの交渉が不要な場合に選択肢になります。民間業者が使者の範囲にとどまる限り、ただちに問題が生じるわけではありません。ただし会社が条件を提示してきた場合の対応は本人が行う必要があります。不当な条件提示が想定される場合は労組型以上を検討してください。
参考文献(一次情報URL)
- e-Gov 法令検索 弁護士法(72条・27条):https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC1000000205
- e-Gov 法令検索 労働組合法第6条:https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000174
- e-Gov 法令検索 労働基準法第24条:https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 帝国データバンク「退職代行業52法人」調査(2025年10月24日公表):https://www.tdb.co.jp/report/industry/20251024-taisyoku25y/
- 弁護士ドットコムニュース 2026/2/3 モームリ逮捕報道:https://www.bengo4.com/c_1009/n_19954/
- ITmedia NEWS 2026/4/23 モームリ受付再開:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2604/23/news121.html
- フォーゲル綜合法律事務所 公式:https://enman-taishokudaikou.com/
- 退職代行Jobs 公式:https://jobs1.jp/
- 退職代行ガーディアン 公式:https://taisyokudaiko.jp/
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な対応については弁護士または労働基準監督署にご相談ください。料金・サービス内容は公式公表値であり、最新情報は各社公式サイトでご確認ください。合法性スコアは編集部独自の評価指標であり、特定業者の違法性を断定するものではありません。


コメント