※本記事には広告(PR)が含まれます。業者の評価は利害関係から独立した編集部の基準で行っています(広告に関する表記)。
先に結論です。退職代行が「非弁行為」として違法になるかどうかは、運営主体と業務範囲の2軸で決まります。弁護士法人または労働組合が運営し、法律の認める範囲で動けば合法です。民間業者が会社との条件交渉に踏み込むと、弁護士法72条違反のリスクが生じます。本記事はe-Gov条文・モームリ事件報道・企業アンケートなどの一次情報をもとに、非弁行為と退職代行の境界線を中立に整理します。
この記事の要点
- 非弁行為とは報酬目的で法律事務を扱う行為で、弁護士法72条で禁止。違反は刑事罰の対象になる。
- 民間業者の退職代行は「使者」(意思の伝達のみ)の範囲に限り合法。交渉・請求に踏み込むと違法リスクが生じる。
- 2026年2月のモームリ事件以降、企業の約30%が民間単独型からの通告に応じない方針を取っている(東京商工リサーチ調査)。
非弁行為とは何か|弁護士法72条の構造
非弁行為(ひべんこうい)とは、弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を取り扱う行為です。退職代行の適法性を論じるとき、ほぼすべての議論はこの72条との関係に収束します。
弁護士法第72条(非弁護士の法律事務取扱い等の禁止)
「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」
退職代行に関係する核は3点です。
- 「報酬を得る目的で」:料金を取る業者は対象。無償なら適用外
- 「一般の法律事件」:退職トラブル・有給・残業代も含まれ得る
- 「代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務」:本人の代わりに会社と交渉・条件調整する行為
罰則は弁護士法77条に定めがあり、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります(出典:e-Gov 弁護士法第77条)。法人として運営している場合は両罰規定により法人にも罰金が科され得ます。行政指導ではなく刑事罰の対象であることが、モームリ事件で運営者逮捕につながった背景です。
72条の立法趣旨は「法律事務の品質確保と国民の権利擁護」にあるとされます。資格を持たない者が法律事務に踏み込むと依頼者が不利益を被るリスクが高く、退職代行の場面でも民間業者が「交渉」したつもりで法的に無効、あるいは不利な条件を引き出してしまうケースが問題視されてきました。

非弁提携とモームリ事件|27条と72条の交差
非弁行為の議論にはもう一つの論点があります。民間業者と弁護士の関係を縛る「非弁提携」で、弁護士法27条が規律します。2026年2月のモームリ事件の中心争点もここでした。
弁護士法第27条(非弁護士との提携等の禁止)
「弁護士は、第七十二条乃至第七十四条の規定に違反する者から事件の周旋を受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。」
72条が民間業者(非弁護士)を縛るのに対し、27条は弁護士の側を縛ります。民間業者から案件を回してもらうこと(周旋)や名義貸しを弁護士に禁じる規定です。
| 条文 | 縛る対象 | 内容 |
|---|---|---|
| 弁護士法72条 | 非弁護士(民間業者など) | 報酬目的で法律事務を扱うことを禁止 |
| 弁護士法27条 | 弁護士 | 非弁護士から事件周旋を受けること・名義貸しを禁止 |
| 労組法6条 | 労働組合 | 団体交渉権を付与(72条の例外として整理) |
モームリ事件の経緯は次のとおりです。
モームリ事件の経緯(2026年6月時点)
- 2026年2月3日:運営会社アルバトロスの代表夫妻が弁護士法72条違反の疑いで逮捕(容疑段階)
- 2026年2月24日:東京地検が代表夫妻と法人アルバトロスを起訴。弁護士法人みやびの佐藤秀樹弁護士および弁護士法人オーシャンの梶田潤弁護士、両法人も弁護士法違反罪で在宅起訴。紹介人数は約174人と公表(出典:時事通信 2026/2/24、第一東京弁護士会 公表)
- 2026年3月4日:谷本夫妻らを組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)の疑いで追送検(出典:弁護士ドットコムニュース 2026/3)
- 2026年4月23日:モームリが新規受付を再開(出典:ITmedia NEWS 2026/4/23)
最終的な有罪・無罪の判断は今後の公判で示される見通しです。
事件の核心は、民間業者が退職希望者を提携弁護士に紹介し1人あたり約16,500円の定額紹介料を受け取っていたとされる点です。紹介人数約174人という規模が「業として行っていた」と評価されやすい構造になっており、27条と72条の双方が問題視されました。
2025年10月には東京弁護士会が「退職代行サービスと弁護士法違反に関する注意喚起」を発出し、「弁護士でない者が報酬を得る目的で『交渉』『請求』を行うことは弁護士法72条に違反するおそれがある」と明言しています(出典:東京弁護士会 2025/10)。事件はこの注意喚起の約4か月後に発生しました。

民間業者の「使者」と「交渉」の境界線
退職代行の合否を分ける最重要概念が「使者」と「代理人(交渉者)」の違いです。
使者とは、本人の意思をそのまま相手に伝える役割で、法的判断や交渉権限を含みません。民間業者が「使者」にとどまる限り、72条が禁じる「法律事務」には該当しにくいとされます。
| 項目 | 使者(合法の範囲) | 代理人・交渉者(非弁護士は違法リスク) |
|---|---|---|
| 役割 | 本人の意思を伝達するのみ | 本人の代わりに判断・交渉する |
| 法的判断 | しない | する |
| 退職代行の例 | 「○月○日付で退職します」と伝える | 「有給は全部使わせてほしい」と要求する |
一般論として、以下の対応に民間業者が踏み込むと弁護士法72条との関係で問題が生じ得ます。個別事案については弁護士にご相談ください。
- 会社が提示した退職日の変更要求への応答・調整
- 有給消化日数や退職金額の交渉
- 未払い残業代の支払い要求
- パワハラ慰謝料の請求
- 会社からの損害賠償請求への反論
- 離職票・源泉徴収票などの送付期日交渉
「ただ伝えるだけ」と「条件を調整する」の境界は実務上あいまいな部分があります。会社からの応答に何かしら返答する時点で、すでに交渉に踏み込んでいる可能性があります。民間業者が合理的な選択肢となるのは、退職意思が固まっており有給・残業代・慰謝料の請求が一切不要なケースに限られます。
東京商工リサーチが2026年4月に公表した企業向けアンケート(6,425社)では、企業の30.4%が「弁護士または労働組合以外からの退職代行通告には取り合わない」と回答しています(出典:東京商工リサーチ 2026年4月調査)。企業の3割が拒否する方針を取っている以上、民間単独型は退職を確実に進める観点からも選択肢が狭まっています。

違法業者を見分ける5つのチェックポイント
利用検討段階で確認すべき5項目を整理します。複数当てはまる場合は、非弁行為のリスクが相対的に高いと判断できます。
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| ①「交渉」「請求」「代理」の表記 | 民間業者がこれらの言葉を広告・LPで使っていないか |
| ②提携先の透明性 | 「労組提携」「弁護士監修」の事務所名・登録番号まで開示されているか |
| ③会社応答への対応を謳う | 「条件を調整します」など使者の範囲を超える表現がないか |
| ④料金の不自然さ | 業界平均29,410円(帝国データバンク)から大きく外れる極端な低価格や成功報酬制ではないか |
| ⑤会社情報の整合性 | 運営会社・特商法表記・フッター情報が一致しているか |
3項目以上当てはまる場合は、別の業者を検討するのが安全です。帝国データバンクが2025年10月24日に公表した「退職代行業52法人」調査では、料金平均は29,410円とされています(出典:帝国データバンク 2025/10/24)。モームリ事件以降、「労組提携」「弁護士監修」の表記だけでは安全とは言い切れないため、登録番号・所属弁護士会・組合所在地まで確認する目線が必要です。
合法な選択肢の選び方
非弁行為のリスクを避けるなら、運営型を「弁護士法人」または「労働組合直営」に絞るのが基本です。
弁護士法人みやびに関する注意:弁護士法人みやびの佐藤秀樹弁護士および弁護士法人オーシャンの梶田潤弁護士は、モームリ事件に関連して2026年2月24日に弁護士法違反罪で在宅起訴されています(出典:時事通信 2026/2/24、第一東京弁護士会 公表)。起訴は有罪確定を意味しませんが、利用判断は最新報道をご確認の上、慎重に行ってください。
状況別の選び方
- 慰謝料・残業代の請求、会社からの損害賠償に対応したい → 弁護士法人型
- 有給消化・退職条件の交渉まで含めたい → 労働組合直営型(労組法6条の団体交渉権が根拠)
- 意思伝達のみでよく費用を抑えたい → 労働組合直営型(使者の範囲であれば民間型も選択肢のひとつ)
労働組合は労働組合法第6条により団体交渉権を持ち、賃金・有給・退職金などの労働条件について会社と交渉できます(出典:e-Gov 労働組合法第6条)。憲法28条の労働三権に根拠をもつ権利で、弁護士法72条の例外として整理されます。弁護士法人は法律事務をすべて扱える唯一の形態です。
弁護士法人型の選択肢として、紹介料モデルに依存しない弁護士法人直営型があります。
弁護士法人直営型の退職代行(広告)
- 運営:ガイア総合法律事務所(弁護士法人)
- 対応範囲:退職通告から損害賠償・慰謝料請求まで
- 特徴:紹介料モデルではない弁護士法人直営型
補助的な選択肢として、フォーゲル綜合法律事務所(嵩原安三郎弁護士運営)は弁護士法人型でライトプランから対応があります(公式サイト)。プランによって対応範囲が異なるため、公式で要確認です。

まとめ
非弁行為と退職代行:整理のポイント
- 非弁行為=弁護士でない者が報酬目的で法律事務を扱うこと(弁護士法72条違反・刑事罰あり)
- 非弁提携=民間業者と弁護士の不適切な紹介関係(27条+72条の双方が問題)
- 民間業者は「使者」の範囲のみが合法。会社との交渉・請求に踏み込めば違法リスクが生じる
- 労組型は労組法6条の団体交渉権により労働条件交渉が可能
- 弁護士法人型はすべての法律事務を扱える
- モームリ事件以降、提携先の透明性(登録番号・組合所在地まで)を確認する目線が必須

よくある質問
Q. 「弁護士監修」と「弁護士運営」はどう違いますか?
A. 「弁護士運営」は弁護士法人または弁護士事務所が直接サービスを運営している状態で、案件ごとに弁護士が代理人として対応します。「弁護士監修」は業者が弁護士に内容確認や書面チェックを依頼している関係を指し、案件ごとに弁護士が代理人になるわけではありません。慰謝料請求まで含めたい場合は、弁護士運営型を選ぶ流れが一般的です。
Q. 民間業者を使った後でトラブルになったら誰に相談すべきですか?
A. 一般論として、まずは国民生活センター(消費者ホットライン188)への相談が入口として使えます。会社からの損害賠償請求や未払い賃金など法律的なトラブルが生じている場合は、法テラスや各地の弁護士会の労働相談窓口を利用できます。個別事案については弁護士にご相談ください。
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免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な対応については弁護士または労働基準監督署にご相談ください。料金・サービス内容は2026年6月13日時点の公式公表値です。最新情報は各社公式サイトでご確認ください。合法性スコアは編集部独自の評価指標であり、特定業者の違法性を断定するものではありません。モームリ事件に関する記述は2026年6月時点の報道情報に基づいており、最終的な有罪・無罪の判断は今後の公判で示される見通しです。
参考文献(一次情報URL)
- e-Gov 法令検索 弁護士法(72条・27条・77条):https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC1000000205
- e-Gov 法令検索 労働組合法第6条:https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000174
- 帝国データバンク「退職代行業52法人」調査(2025年10月24日公表):https://www.tdb.co.jp/report/industry/20251024-taisyoku25y/
- 弁護士ドットコムニュース 2026/2/3 モームリ逮捕報道:https://www.bengo4.com/c_1009/n_19954/
- 時事通信 2026/2/24 弁護士起訴報道:https://www.jiji.com/jc/article?k=2026022401063&g=soc
- 第一東京弁護士会 公表:https://www.ichiben.or.jp/news/oshirase/news/2026020530252.html
- 東京弁護士会「退職代行サービスと弁護士法違反に関する注意喚起」(2025年10月):https://www.toben.or.jp/news/2025/10/post-980.html
- 東京商工リサーチ「退職代行からの連絡、企業の3割取り合わず」(2026年4月):https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202753_1527.html
- 弁護士ドットコムニュース 2026/3 追送検報道:https://news.yahoo.co.jp/articles/bf9c7b59d9da4dc2e7b293da2ebce8a3a502e3e7
- ITmedia NEWS 2026/4/23 モームリ受付再開:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2604/23/news121.html
- 国民生活センター:https://www.kokusen.go.jp/
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