退職を考えるとき、失業保険(雇用保険の基本手当)でいくら受け取れるかは、生活設計の土台になります。受給額は「賃金日額 × 給付率 × 所定給付日数」で決まり、退職理由によって総額が大きく変わります。たとえば同じ月収でも、自己都合退職と会社都合(特定受給資格者)退職とでは、受け取れる総額が約2倍違う場合があります。本記事では、計算の仕組みと月収別・退職理由別の目安を、ハローワーク・厚生労働省の公的資料をもとに整理します。
※本記事には広告(PR)が含まれます。
※本記事は一般的な情報の提供を目的としています。実際の支給額は個人の状況により異なります。正確な金額はハローワーク・雇用保険受給資格者証でご確認ください。
この記事の要点
Q1. 失業保険の金額はどう決まりますか?
「賃金日額 × 給付率(50〜80%)× 所定給付日数」で決まります。賃金が低い人ほど給付率が高くなります。
Q2. 月収25万円ならいくらもらえますか?
基本手当日額は約5,700円が目安です。自己都合90日で約51万円、会社都合180日で約103万円が概算です。
Q3. 退職理由で金額は変わりますか?
変わります。会社都合や特定理由離職者は給付日数が長くなり、総額が自己都合の約2倍になる場合があります。
失業保険の金額が決まる3つの要素
失業保険(基本手当)の総額は、次の3つの掛け算で決まります。
- 賃金日額:退職前6か月の賃金から計算する1日あたりの賃金
- 給付率:賃金日額に掛ける割合(50〜80%)
- 所定給付日数:給付を受けられる日数(退職理由・年齢・加入期間で変動)
このうち、退職理由によって最も大きく変わるのが「所定給付日数」です。順番に見ていきます。
ステップ1:賃金日額を計算する
賃金日額は、次の式で計算します(ハローワーク 基本手当について)。
賃金日額 = 離職前6か月に毎月決まって支払われた賃金の合計 ÷ 180
ここでの「賃金」は額面(税・社会保険料を引く前)で、賞与(ボーナス)は含みません。残業代や通勤手当などの毎月の手当は含みます。
たとえば額面の月収が25万円なら、賃金日額は「25万円 × 6 ÷ 180 = 約8,333円」です。
ステップ2:給付率を掛けて基本手当日額を出す
賃金日額に給付率を掛けたものが「基本手当日額」、つまり1日あたりの支給額です。給付率は50〜80%(60〜64歳は45〜80%)で、賃金が低い人ほど高い率になります(前掲・ハローワーク)。
基本手当日額には上限・下限がある
基本手当日額には、年齢区分ごとの上限額と、全年齢共通の下限額があります。2025年8月1日に改定された現行額は次のとおりです(厚生労働省 基本手当日額の変更(PDF))。
| 離職時の年齢 | 賃金日額の上限 | 基本手当日額の上限 |
|---|---|---|
| 29歳以下 | 14,510円 | 7,255円 |
| 30〜44歳 | 16,110円 | 8,055円 |
| 45〜59歳 | 17,740円 | 8,870円 |
| 60〜64歳 | 16,940円 | 7,623円 |
下限額は全年齢共通で、賃金日額3,014円・基本手当日額2,411円です(前掲・厚労省)。賃金が高くても上限を超える分は支給されず、低くても下限は保障される仕組みです。
ステップ3:所定給付日数を確認する
基本手当日額に「所定給付日数」を掛けると、おおよその総額になります。所定給付日数は退職理由で大きく変わります。
自己都合・定年退職などの場合
自己都合退職や定年・契約満了などの一般の離職者は、加入期間に応じて次のとおりです(ハローワーク 所定給付日数)。
| 雇用保険の加入期間 | 所定給付日数 |
|---|---|
| 1年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
会社都合・特定理由離職者の場合
倒産・解雇や、ハラスメント・賃金未払いなどによる離職(特定受給資格者・特定理由離職者)は、年齢と加入期間で日数が増えます(前掲・ハローワーク)。
| 年齢\加入期間 | 1年未満 | 1〜5年 | 5〜10年 | 10〜20年 | 20年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | — |
| 30〜35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
| 35〜45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
| 45〜60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
| 60〜65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
同じ人でも、自己都合か会社都合かで給付日数が2倍以上になる場合があるとわかります。
月収別シミュレーション(概算)
ここまでの要素を使い、月収別の目安をまとめます。額面月収(賞与除く)・30歳・2025年8月時点の計算式を前提とした概算です。実際の金額は個人の状況で変わります。
| 額面月収 | 基本手当日額(目安) | 自己都合90日の総額 | 会社都合180日の総額 |
|---|---|---|---|
| 15万円 | 約4,000円 | 約36万円 | 約72万円 |
| 20万円 | 約4,990円 | 約45万円 | 約90万円 |
| 25万円 | 約5,710円 | 約51万円 | 約103万円 |
| 30万円 | 約6,210円 | 約56万円 | 約112万円 |
| 35万円 | 約6,490円 | 約58万円 | 約117万円 |
表からわかるとおり、月収25万円の人でも、退職理由が自己都合か会社都合かで約50万円の差が生じます。退職理由の判定は、受給総額に直結する重要なポイントです。
退職後にもらえるお金は失業保険だけではありません。給付金・手当の全体像は、こちらでまとめています。
受給開始までの流れと「待期・給付制限」
失業保険は、退職後すぐに振り込まれるわけではありません。受給までにいくつかの段階があります。
待期7日間
ハローワークで求職申込みをして受給資格が決まると、まず全員に「待期7日間」があります。この期間は支給されません。
自己都合は給付制限がある
自己都合退職の場合、待期の後にさらに「給付制限期間」があります。2025年4月以降、この期間は原則1か月に短縮されています。なお、自分で教育訓練を受ける場合などは給付制限が課されないケースもあります。会社都合(特定受給資格者)の場合は、給付制限がありません。
そのため、自己都合退職では受給開始まで時間がかかります。給付制限の有無や最新の取り扱いは、ハローワークでご確認ください。
失業給付の手続きや受給期間の全体像は、こちらで詳しく解説しています。
「会社都合にしたい」と思ったときに確認すること
給付日数が大きく変わるため、退職理由の判定は重要です。ハラスメントや長時間労働、賃金未払いなどが原因の退職は、特定受給資格者・特定理由離職者と認められる場合があります。
退職前に、勤務状況の記録(残業時間がわかる資料、ハラスメントの経緯メモなど)を残しておくと、判定の際の材料になります。離職票の離職理由に納得できない場合は、ハローワークに異議を申し出る手続きもあります。
特定受給資格者・特定理由離職者の認定基準は、こちらで整理しています。
早く再就職すると「再就職手当」がある
失業保険を受給しながら早く再就職が決まった場合、残りの給付日数に応じて「再就職手当」を受け取れる場合があります。失業保険を全部もらってから就職するより、早期再就職のほうが有利になるケースもあります。
再就職手当の計算と条件は、こちらでまとめています。
FAQ
Q. 失業保険は手取り月収の何割くらいですか?
賃金日額(額面)の50〜80%が基本手当日額です。賃金が低い人ほど率が高くなります。額面ベースの計算で、賞与は含みません。手取りとの比較ではなく、額面の月収をもとに考えてください(ハローワーク)。
Q. パートやアルバイトでも失業保険はもらえますか?
雇用保険に加入していて、受給要件(離職前の加入期間など)を満たせば対象になります。加入期間や週の労働時間によって変わるため、ハローワークでご確認ください。
Q. 月収25万円・30歳・自己都合だと総額いくらですか?
加入1年以上10年未満なら所定給付日数は90日です。基本手当日額の目安は約5,710円のため、総額は約51万円が概算です。正確な額は雇用保険受給資格者証でご確認ください。
Q. 賞与(ボーナス)は計算に入りますか?
入りません。賃金日額の計算に使うのは「毎月決まって支払われた賃金」で、賞与は除きます(ハローワーク)。
参考文献
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html
- ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html
- 厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更(令和7年8月1日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001520021.pdf
本記事は一般的な情報の提供を目的としています。基本手当日額・給付日数・給付制限は、改定や個人の状況により変わります。シミュレーションは概算であり、正確な支給額はハローワーク・雇用保険受給資格者証でご確認ください。個別事案はハローワークにご相談ください。

コメント