就労移行支援は、障害や難病のある方が一般企業への就職を目指して訓練を受けられる障害福祉サービスです。原則2年間、通所しながら職業訓練・就職活動支援・職場実習を受けられます。費用は世帯の所得によって変わり、非課税世帯なら0円ですが、課税世帯では月9,300円または37,200円の自己負担が発生します。手帳は必須ではなく、失業保険・傷病手当金との関係には条件の向きを整理する必要があります。
この記事の要点
- 対象は原則18歳以上65歳未満で、障害種別は問わない。手帳は必須ではない
- 費用は世帯所得4区分で決まる。「誰でも無料」は不正確で、課税世帯には上限内で自己負担が生じる
- 失業保険との両立は自動ではなくハローワーク確認が必要。傷病手当金とは要件の向きが逆
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対象者:誰が使えるのか
就労移行支援の対象は、一般企業への就労を希望する原則18歳以上65歳未満の方です(e-Gov 障害者総合支援法第5条)。障害の種別は限定されておらず、身体障害・知的障害・精神障害(うつ病・統合失調症など)・発達障害・難病(対象疾病に該当する場合)のある方が含まれます。
障害者手帳は必ずしも必要ではありません。手帳がない場合でも、医師の診断書や通院の事実をもとに自治体が利用の可否を判断する運用があります。ただし「診断書があれば必ず使える」わけではなく、市区町村が個別に審査して決定します。手帳の要否や必要書類は自治体によって扱いが異なるため、お住まいの障害福祉担当窓口に確認してください。
65歳以上は原則対象外ですが、65歳になる前から継続して利用している場合など例外的な扱いがあります。休職中・在職中の方が使えるかどうかも自治体の判断によるため、個別に窓口で確認する必要があります。
うつ病や適応障害などで退職し、回復後に再就職を目指す方も対象の範囲に含まれます。傷病手当金との関係は次の章で整理します(あわせてうつ病・適応障害と傷病手当金もご参照ください)。
費用:「9割無料」は正確ではない
就労移行支援の費用は、世帯の所得に応じた月額上限制です。「9割無料」や「ほとんどの人が無料」という表現は正確ではなく、課税世帯では実費負担が発生します(厚労省 障害者の利用者負担)。
| 区分 | 世帯の収入状況 | 月額の負担上限 |
|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護を受給している世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満など) | 9,300円 |
| 一般2 | 一般1に該当しない課税世帯 | 37,200円 |
ここで注意が必要なのは「世帯」の定義です。18歳以上の障害のある方の場合、費用を判定する世帯の範囲は本人と配偶者のみです(前掲・厚労省 利用者負担)。同居している親や兄弟の収入は原則として含まれません。配偶者がいない場合は本人の所得だけで判定されるため、実家暮らしであっても本人が非課税なら0円になるケースがあります。
なお、上記の負担上限はサービス利用料に関するものです。事業所への交通費や昼食代は別途自己負担になる場合があります。自治体や事業所によって助成の有無が異なるため、通所を検討する際は事業所と自治体の窓口に実際の総額を確認してください。
失業保険・傷病手当金との関係
退職直後の生活費として、失業保険や傷病手当金との関係を気にする方は多くいます。それぞれ要件の向きが異なるため、個別に整理します。
失業保険(雇用保険の基本手当)
失業保険を受給するには、一定の求職活動実績が必要です。就労移行支援への通所そのものが自動的に求職活動実績として認められるとは限らず、管轄のハローワークの判断によります(ハローワーク 求職活動実績について)。「就労移行支援に通えば失業保険がもらえる」と単純化せず、両立できるかは必ずハローワークに確認してください。
障害者手帳を持つ方などは、雇用保険上「就職困難者」と認定される場合があります。該当すると基本手当の所定給付日数が最長300日になるケースがありますが、可否は個別の状況によります。失業給付全体の仕組みは失業給付 完全ガイドで整理しています。
傷病手当金
傷病手当金は「仕事に就くことができない(労務不能)」ことが支給の前提です。一方、就労移行支援は「就労が可能になる見込みがあり、就職を目指す」段階で利用するサービスです。要件の向きが逆であるため、両者を同じタイミングで肯定的に併用できると考えるのは適切ではありません。
体調回復の段階に沿って整理すると、療養期(傷病手当金)→回復期(切り替えの検討)→訓練期(就労移行支援)という流れになります。回復の可否を判断するのは主治医です。傷病手当金を受けながら就労移行支援に通えるかどうかは自己判断せず、主治医および加入先の健康保険組合・協会けんぽにご確認ください。傷病手当金から失業保険への切替手順は体調不良で退職する前に確認する順番で整理しています。
2025年10月の制度変更:就労選択支援の新設
2025年10月から「就労選択支援」が新たな障害福祉サービスとして始まりました(厚労省 就労選択支援について)。本人の希望・能力・適性に合った働き方を選べるよう、就労を始める前にアセスメント(適性評価)を行うサービスです。
就労継続支援B型を新たに利用する方などには、原則として事前の利用が求められる制度設計になっています。就労移行支援の標準利用期間を超えて利用を希望する方への適用は、2027年4月以降に段階的に拡大される予定です。自分の利用にこの制度が関係するかどうかは、開始時期や対象が段階的に変わるため、最新の運用を市区町村の窓口で確認することをおすすめします。
利用の流れと事業所の選び方
利用の流れ
申請から通所開始までの基本的な手順は次の4ステップです。①市区町村の障害福祉担当窓口に相談・申請する、②自治体の調査・審査を経て「障害福祉サービス受給者証」が交付される、③利用したい事業所を見学・選定し契約する、④個別支援計画を作成して通所を開始する。
事業所を選ぶ5つの確認点
受給者証が交付されたらどの事業所に通うかを選びます。事業所ごとに支援内容や得意分野が異なるため、複数を見学して比較することがミスマッチを防ぐ近道です。確認しておきたい点を挙げます。
- 就職率の分母を確認する:「全利用者を分母にする」のか「卒業者だけを分母にする」のかで数字は大きく変わります。高い数字を見たら計算方法を質問してください。
- 定着率(6か月・1年)を確認する:就職後にどれだけ働き続けられているかは、就職後の支援の質を測る指標になります。
- 希望職種の就職実績を確認する:全体の就職率が高くても、自分が希望する職種・業界の実績があるとは限りません。
- 自分の特性との適合を確認する:発達障害向けのプログラムに強い事業所、精神障害からの復職支援に強い事業所など、得意分野は事業所によって異なります。
- 見学時の説明の具体性を確認する:支援方針や個別支援計画の立て方を具体的に説明してくれるかどうかが、通所後の支援の質を推し量る手がかりになります。
なお、本記事は特定の事業所を推薦するものではありません。就労移行支援は選択肢の一つであり、利用するかどうか・どの事業所を選ぶかはご自身の状況に照らして判断してください。
体調が回復し「また働きたい」と思えてきた段階では、就労移行支援という公的な福祉サービスを使う選択肢もあります。生活リズムを整えながら就職に向けた訓練やサポートを受けられる制度です(対象や利用要件は自治体・事業所により異なります)。
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参考文献
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本記事は一般的な情報の提供を目的としています。利用の可否・費用・各給付との関係は個別の状況により異なります。個別事案は市区町村の障害福祉担当窓口・ハローワーク・健康保険組合・主治医にご確認ください。診断・治療・療養の判断は必ず主治医とご相談ください。


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