体調不良で退職を考えるとき、辞める前に確認する「順番」を間違えると、受け取れる総額が大きく変わることがあります。基本の流れは、在職中に傷病手当金の受給を開始し、退職後も継続給付を受け、回復後に失業保険へ切り替えるという時系列です。本記事では、傷病手当金の要件・退職日の注意点・失業保険への切替手順を、協会けんぽとハローワークの公的情報をもとに整理します。
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※本記事は一般的な情報の提供を目的としています。給付の可否・金額は個別の状況により異なります。個別事案は健康保険組合・協会けんぽ・ハローワーク・主治医にご確認ください。診断・治療・療養の判断は必ず主治医とご相談ください。
退職を急ぐ前に:順番を間違えると総額が変わる
体調不良での退職は、手続きの順番が受給総額を左右します。まず全体像をつかむことが大切です。
受給の時系列マップ
理想的な流れは、次の4ステップです。
- 在職中に傷病手当金の受給を開始する
- 退職する(退職日の扱いに最大の注意)
- 退職後も傷病手当金を継続して受け取る
- 回復後に失業保険へ切り替える
この順番が崩れると、本来受け取れたはずの給付を受け取れなくなる場合があります。とくに退職日の設定は、後述する「落とし穴」に直結します。
焦って先に辞めない
体調がつらいと、まず辞めることを優先しがちです。しかし在職中にしか整えられない受給条件があります。退職日を決める前に、本記事の順番を確認することをおすすめします。
傷病手当金の4つの要件
傷病手当金は、病気やけがで働けないときに健康保険から支給される制度です。支給には4つの要件があります。
4要件の内容
協会けんぽは、次の4要件を示しています(協会けんぽ 傷病手当金)。
- 業務外の病気やけがの療養のための休業であること(自宅療養も対象。美容整形など病気とみなされないものは対象外)
- 仕事に就くことができないこと(労務不能。医師の意見などをもとに判定)
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと(待期。連続3日の待期完成後、4日目から支給対象)
- 休業した期間に給与の支払いがないこと(給与があっても傷病手当金より少なければ差額が支給)
待期3日は有給・土日も含められる
待期の3日間には、有給休暇や土日・祝日も含めることができます(前掲・協会けんぽ)。ただし連続している必要があります。労務不能かどうかの判断は医師が行うため、療養や就労の可否は主治医とご相談ください。
「退職日に出勤すると継続給付が不支給」の落とし穴
体調不良での退職で最も注意すべき点が、退職日の過ごし方です。ここを誤ると退職後の給付が受けられなくなります。
退職日の出勤は要注意
協会けんぽは、資格喪失後の継続給付について「退職日に出勤したときは、継続給付を受けるための条件を満たさないため、資格喪失後の傷病手当金は支払えません」と明記しています(協会けんぽ 資格喪失後の傷病手当金、東京都 資格喪失後の継続給付)。
挨拶や荷物の引き取りも該当しうる
ここでの「出勤」は、通常の労務だけを指すとは限りません。退職日の挨拶のための出社や、私物・荷物の引き取りでの出社も、出勤とみなされうるとされています。退職日の行動は、健康保険組合・協会けんぽに事前確認することをおすすめします。
在職中に申請を始めるべき理由
傷病手当金は、退職後も受け取り続けられる場合があります。ただしその前提として、在職中に整えるべき条件があります。
待期3日を在職中に完成させる
退職後の継続給付を受けるには、退職日(資格喪失日の前日)時点で傷病手当金を受給中、または受けられる状態である必要があります。そのためには、待期3日を在職中に完成させておくことが前提になります(前掲・協会けんぽ)。
被保険者期間1年以上を満たす
継続給付には、退職日までに「継続して1年以上の被保険者期間」が必要です(前掲・協会けんぽ)。転職直後などで加入期間が1年未満の場合、退職後の継続給付は受けられない点に注意が必要です。
退職後も受け取り続ける2つの条件
退職してからも傷病手当金を受け取るには、2つの条件をどちらも満たす必要があります。
条件1:継続1年以上の被保険者期間
退職日までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あることが必要です(前掲・協会けんぽ)。
条件2:退職日に受給中または受けられる状態
退職日に傷病手当金を受給しているか、受けられる状態であることが必要です(前掲・協会けんぽ)。前章の「退職日に出勤しない」という注意点は、この条件を満たすために重要になります。
支給額の計算方法と月収別の目安
受け取れる金額は、加入していた健康保険での報酬をもとに計算されます。
計算式
日額は、次の式で計算します(協会けんぽ 京都支部 研修資料)。
支給開始日以前の継続した12ヶ月間の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3
月収別の目安
標準報酬月額をもとにした、1日あたり・1ヶ月あたりの目安は次のとおりです。標準報酬月額は実際の月収と一致しない場合があるため、あくまで概算です。
| 標準報酬月額 | 日額の目安 | 30日分の目安 |
|---|---|---|
| 20万円 | 約4,440円 | 約13.3万円 |
| 25万円 | 約5,550円 | 約16.6万円 |
| 30万円 | 約6,660円 | 約20.0万円 |
| 40万円 | 約8,880円 | 約26.6万円 |
正確な金額は、加入先の健康保険組合・協会けんぽにご確認ください。
支給期間は通算1年6ヶ月
傷病手当金には支給期間の上限があります。2022年の改正で扱いが変わりました。
通算化の意味
2022年1月の改正により、支給期間は「支給開始日から通算して1年6ヶ月」となりました(前掲・協会けんぽ 京都支部)。
復職期間はカウントされない
通算化により、途中で復職して給与が支払われた期間は、支給期間としてカウントされません(前掲・協会けんぽ 京都支部)。改正前は暦の上で1年6ヶ月を過ぎると打ち切りでしたが、現在は実際に支給を受けた日数で通算されます。復職・再休職を繰り返すケースで影響が大きい変更です。
傷病手当金が終わったら:失業保険への切替
傷病手当金の支給が終わり、働ける状態になったら、失業保険(基本手当)への切替を検討します。
受給期間の延長(最長4年)
失業保険は原則として離職日の翌日から1年が受給期間です。しかし、病気などで引き続き30日以上働けない場合は、受給期間の延長を申請できます(雇用保険法20条1項)。延長により、本来の1年に最大3年を加えた、最長4年まで延ばせます(ハローワーク 基本手当)。
同時受給はできない
傷病手当金は「労務不能(働けない)」が前提、失業保険は「働ける状態で求職中」が前提です。条件が相反するため、両方を同時に受け取ることはできません(前掲・ハローワーク)。
切替の手順
おおまかな流れは次のとおりです。
- 退職後、早めにハローワークで受給期間延長を申請する
- 傷病手当金を受給しながら療養する
- 主治医が就労可能と判断する
- 延長を解除し、失業保険の受給を開始する
延長申請には期限があります。手続きの要件・期限はハローワークにご確認ください。療養から就労へ移れるかどうかの判断は、主治医とご相談ください。
障害年金との関係
傷病が長期化すると、障害年金の対象になる場合があります。傷病手当金との調整ルールには注意が必要です。
障害厚生年金との調整
同一の傷病で障害厚生年金を受けられる場合、傷病手当金は原則として支給が停止されます。ただし、傷病手当金の日額が障害厚生年金(同一傷病による障害基礎年金を含む額)の360分の1より多ければ、その差額が支給されます(健康保険法58条、平成7年7月27日 庁保険発第22号)。
障害基礎年金のみなら調整なし
障害基礎年金のみを受給している場合は、傷病手当金との調整は行われず、両方を受け取れます(前掲・健康保険法58条ほか)。あまり知られていないポイントです。具体的な調整の有無は、加入先の健康保険組合・協会けんぽ・年金事務所にご確認ください。
順番チェックリストと退職代行を使う場合の注意
最後に、確認すべき順番をチェックリストにまとめます。
退職前のチェックリスト
- 待期3日を在職中に完成させたか
- 退職日までに被保険者期間が継続1年以上あるか
- 退職日に出勤しない予定か(挨拶・荷物引き取りも含めて確認)
- 主治医に労務不能の状態を相談しているか
- 受給額・支給期間を健康保険組合・協会けんぽに確認したか
退職代行を使う場合:退職日設定を業者任せにしない
退職代行を利用する場合でも、退職日の設定だけは内容を必ず自分で確認してください。前述のとおり、退職日に出勤すると継続給付の条件を満たせなくなります。業者に日程調整を任せきりにせず、退職日の扱いを健康保険組合・協会けんぽに照らして確認することが重要です。なお、会社との交渉が必要な場合、法的な交渉ができるのは弁護士または労働組合に限られます。
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FAQ
退職日に有給を使って休めば出勤扱いにならない?
退職日に労務に就かず有給休暇で休んだ場合の扱いは、個別の状況によります。退職日の過ごし方は、健康保険組合・協会けんぽに事前にご確認ください。
傷病手当金をもらいながら転職活動はできる?
傷病手当金は労務不能であることが前提です。求職・就労が可能な状態かどうかの判断は主治医が行います。療養と就労の判断は主治医とご相談ください。
国民健康保険に切り替えると傷病手当金はもらえない?
退職後の継続給付は、退職時に加入していた健康保険からの給付です。国民健康保険への切替後も、要件を満たせば継続給付を受けられる場合があります。詳細は加入先の協会けんぽ・健康保険組合にご確認ください。
参考文献
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本記事は一般的な情報の提供を目的としています。給付の可否・金額・調整の有無は個別の状況により異なります。個別事案は健康保険組合・協会けんぽ・ハローワーク・主治医にご確認ください。診断・治療・療養の判断は必ず主治医とご相談ください。

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