退職後の健康保険は、国民健康保険(国保)と任意継続の2択です。どちらが安いかは前年所得・扶養家族の人数・退職理由の3点で決まります。パワハラや解雇など会社都合に近い退職なら、国保料が最大70%軽減される制度があるため、国保が大きく有利になるケースが多くなります。一方、月収40万円超で自己都合退職かつ扶養家族が複数いる場合は、任意継続が安くなることもあります。いずれにせよ、どちらを選ぶかは保険料の実額を窓口で試算してから判断するのが基本です。
この記事の要点:
- 特定受給資格者(倒産・解雇・ハラスメント等)は国保料が最大70%軽減される→国保が有利になりやすい
- 扶養家族が多い場合は、国保は人数分保険料が加算されるため任意継続が有利になる場合がある
- 申請期限は任意継続20日・国保14日と短い。退職前に試算を済ませておくことが重要
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任意継続と国保の仕組みの違い
退職して会社の健康保険を抜けると、自分で健康保険を選ぶ必要があります。主な選択肢は任意継続と国保の2つです(家族の扶養に入れる場合はその選択肢もあります)。
任意継続は、在職中の健康保険をそのまま最大2年間継続する制度です。在職中は保険料を会社と折半していましたが、退職後は全額自己負担になります。ただし保険料には上限があり、協会けんぽの場合は標準報酬月額の上限(月32万円換算(協会けんぽ・令和7年度。毎年度改定))で計算されます。つまり在職中の月収が高かった人ほど、任意継続が相対的に割安になりやすいという特徴があります。
一方、国民健康保険は市区町村が運営する制度で、加入者全員が前年所得に応じて保険料を負担します。保険料は前年の給与所得・資産・世帯人数などをもとに計算されるため、地域によっても金額が変わります。退職直後は前年の収入が高ければ保険料も高くなりますが、特定の退職理由に該当する場合は大幅な軽減制度があります。
特定受給資格者の軽減制度が判断を大きく変える
この制度を知っているかどうかで、選択が大きく変わります。
倒産・解雇・パワハラ・ハラスメント・残業が月100時間超えるなどの理由で退職した人は、「特定受給資格者」または「特定理由離職者」として認定されます。この認定を受けると、国保料の計算において前年所得を30%とみなして計算される軽減制度が適用されます。軽減は最長2年間継続します(出典:厚生労働省)。
具体例として、前年の年収が400万円だった場合でも、軽減後は120万円相当として保険料が計算されます。これにより国保料が大幅に下がり、任意継続より安くなるケースが多くなります。
自分が特定受給資格者に該当するかどうかは、ハローワークで交付される離職票の「離職理由コード」で確認できます。コード11・12・21〜23・31・32・34などが対象です。手元の離職票を確認してみてください。なお、特定受給資格者の認定はハローワークが行うため、会社側の記載に不服がある場合は申し立てができます。
月収別・扶養家族別の比較目安
在職時の標準報酬月額と前年所得をもとにした比較の目安です。地域・世帯構成・介護保険料の加算によって実際の金額は変わります。あくまで傾向を把握するための参考としてご覧ください。保険料の実額は、退職前に市区町村の窓口と健康保険組合の両方で確認することを推奨します。
| 月収 | 退職理由 | 国保月額目安 | 任意継続月額目安 | 差額(年間) |
|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 一般自己都合 | 約1.8万円 | 約2万円 | 国保が約2.4万安 |
| 20万円 | 特定受給資格者 | 約0.8万円 | 約2万円 | 国保が約14.4万安 |
| 30万円 | 一般自己都合 | 約2.8万円 | 約3万円 | 国保が約2.4万安 |
| 30万円 | 特定受給資格者 | 約1.2万円 | 約3万円 | 国保が約21.6万安 |
| 40万円以上 | 一般自己都合 | 約3.5〜4万円 | 約3万円(上限) | 任意継続が安い場合も |
月収20〜30万円帯では、一般自己都合退職でも国保がやや安くなる傾向があります。特定受給資格者になると差がさらに開きます。月収40万円超の自己都合退職では、任意継続の保険料上限が効いてくるため、任意継続が安くなるケースも出てきます(出典:協会けんぽ 任意継続)。
扶養家族がいる場合の考え方
扶養家族の人数は、どちらを選ぶかに直接影響します。
任意継続は、扶養家族を追加しても保険料が変わりません。1人分の保険料で家族全員をカバーできるため、扶養家族が多いほど1人あたりのコストが低くなります。
国保は加入する家族1人ずつに均等割が加算されます。子どもや配偶者を含む世帯では、人数が増えるほど国保の保険料が膨らみます。子ども2人以上の世帯では任意継続が有利になるケースも少なくありません。
整理すると、単身者かつ特定受給資格者なら国保が大きく有利になりやすく、扶養家族が多く月収が高い場合は任意継続が安くなりやすい、という傾向があります(出典:協会けんぽ 退職後の健康保険)。ただしこれはあくまで傾向であり、試算なしに判断はできません。
手続きの期限と進め方
どちらを選ぶにしても、期限が短いため注意が必要です。
任意継続の申請期限は、資格喪失日(退職翌日)から20日以内です。1日でも過ぎると原則として加入できません。健康保険組合または協会けんぽの窓口に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出します。
国保の手続きは、資格喪失日から14日以内が目安です。市区町村の国保担当窓口に退職証明書または資格喪失証明書を持参します。特定受給資格者の軽減を受けるには、ハローワークが発行する「雇用保険受給資格者証」の離職理由コードが確認できる書類が必要になります。
退職が決まったら、まず任意継続の保険料(健康保険組合または協会けんぽへ問い合わせ)と国保の保険料(市区町村の窓口で試算)の両方を確認してから選択するのが基本の進め方です。在職中に試算を済ませておくと、退職後の手続きがスムーズになります。退職後の給付金(失業手当・傷病手当金等)の手続きと並行して確認しておくことを推奨します。
退職後のお金全体を確認したい場合
健康保険の選択は、退職後の収支全体の一部にすぎません。失業手当の受給期間・傷病手当金の継続受給・年金の切り替え(厚生年金→国民年金)など、同時に確認すべき手続きが複数あります。自分の退職パターンでどれくらいの給付を受けられるか、どの手続きを優先すべきかを整理したい場合は、FP(ファイナンシャルプランナー)への無料相談が一つの選択肢です。
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本記事は一般的な情報提供を目的としています。保険料の実額は前年所得・お住まいの自治体・世帯構成によって異なります。試算は必ず市区町村の窓口または健康保険組合でご確認ください。個別の判断については社会保険労務士または弁護士にご相談ください。

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