失業保険(雇用保険の基本手当)は、退職理由が「自己都合」か「会社都合」かで、受け取れる総額と受給開始時期が大きく変わります。同じ人でも、会社都合(特定受給資格者)と認められれば、給付日数が2倍以上になる場合があります。本記事では、両者の違い・判定基準・離職票に納得できないときの手続きを、ハローワークの公的資料をもとに整理します。
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※本記事は一般的な情報の提供を目的としています。退職理由の最終的な判定はハローワークが行います。個別事案はハローワーク・労働相談窓口・弁護士等にご相談ください。
この記事の要点
Q1. 自己都合と会社都合で何が違いますか?
給付日数と受給開始時期が違います。会社都合は給付日数が長く、給付制限もないため早く受給できます。
Q2. どんな退職が「会社都合」になりますか?
倒産・解雇のほか、ハラスメント・長時間労働・賃金未払いなどによる退職も該当する場合があります。
Q3. 離職票の理由に納得できないときは?
ハローワークに異議を申し出て、事実をもとに判定し直してもらう手続きがあります。
自己都合と会社都合で変わる2つのこと
退職理由の区分は、失業保険の受け取り方を2つの面で左右します。
違い1:給付日数(=総額)
会社都合に当たる「特定受給資格者」や、一部の「特定理由離職者」は、年齢と加入期間に応じて給付日数が長くなります。自己都合の場合は加入期間だけで決まり、最大でも150日です。一方、特定受給資格者は最大330日まで増えることがあります(ハローワーク 所定給付日数)。
違い2:受給開始時期(給付制限の有無)
自己都合退職は、待期7日間の後に「給付制限期間」があります。2025年4月以降は原則1か月に短縮されていますが、その分だけ受給開始が遅れます。会社都合(特定受給資格者)には給付制限がなく、待期7日の後すぐに受給に進めます。
総額と開始時期の両面で、会社都合のほうが手厚い扱いになります。具体的な金額の試算は、こちらでまとめています。
「特定受給資格者」とは(会社側に主な理由がある離職)
特定受給資格者は、倒産・解雇など、会社側に主な理由がある離職をした人です。代表的なものは次のとおりです(ハローワーク 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲)。
- 倒産・事業所の廃止に伴う離職
- 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く)
- 賃金の大幅な未払い・遅配があった場合
- 賃金が大きく下げられた場合
- 長時間の時間外労働が続いた場合
- 上司・同僚からのハラスメントを受けた場合
長時間労働の目安
時間外労働については、離職前の一定期間に基準を超える残業があったかどうかで判断されます。たとえば「離職前6か月のうち、いずれか連続する3か月で1か月45時間を超える時間外労働」などが目安として挙げられています(前掲・ハローワーク)。詳細な基準はハローワークでご確認ください。
「特定理由離職者」とは(やむを得ない自己都合)
特定理由離職者は、自分から辞めたものの「やむを得ない事情」がある人です。代表的なものは次のとおりです(前掲・ハローワーク)。
- 体調不良・けがなどで働き続けられなくなった場合
- 妊娠・出産・育児などにより離職した場合
- 家族の介護など、家庭の事情で離職した場合
- 通勤が困難になった場合
特定理由離職者と認められると、給付制限がなくなるほか、一部は特定受給資格者と同じ給付日数になる場合があります。体調不良での退職は、この区分に関わることがあります。
体調不良で退職を考えている場合の手順は、こちらで整理しています。
離職票の理由に納得できないときの手続き
退職後、会社から「離職票」が交付されます。ここに記載された離職理由が、実態と違う場合があります。
離職票には本人の異議欄がある
離職票(離職票-2)には、会社が記入した離職理由に対して、本人が異議を述べる欄があります。会社の記載に同意できない場合は、ここで異議を示し、自分の認識する離職理由を記入できます。
ハローワークが事実をもとに判定する
最終的な離職理由は、会社の主張と本人の主張、提出された資料をもとに、ハローワークが判定します。会社が「自己都合」としていても、ハラスメントや長時間労働などの事実が確認されれば、会社都合(特定受給資格者)と判定される場合があります。
退職理由に納得できないときは、自己判断で諦めず、ハローワークに相談することが選択肢になります。
判定の材料になる「証拠」の残し方
ハローワークの判定では、事実を示す資料が役立ちます。退職前から記録を残しておくと、後の手続きがスムーズになります。
残しておくと役立つもの
- 残業時間がわかる資料(タイムカード、勤怠記録、業務メールの送信時刻など)
- ハラスメントの経緯メモ(日時・場所・内容・関係者を時系列で記録)
- 賃金の未払い・減額がわかる資料(給与明細、雇用契約書)
- 会社とのやり取り(メール、チャット、書面)
これらは、退職後では入手しにくくなるものもあります。在職中に手元に残しておくことが大切です。
パワハラの証拠の集め方は、こちらで詳しく整理しています。
退職理由をめぐって会社と対立する場合
退職理由の認定や未払い賃金などをめぐって会社と交渉が必要になる場合、対応できる立場は限られます。法的な交渉や請求ができるのは、弁護士または労働組合です。民間の退職代行業者は、会社との法的な交渉はできません。
ハラスメントや未払い賃金など、金銭の請求を伴う問題がある場合は、弁護士や労働相談窓口(総合労働相談コーナー等)への相談が選択肢になります。
退職後の給付金・手続きの全体像は、こちらでまとめています。
FAQ
Q. 自己都合でも給付制限なしになる場合はありますか?
あります。やむを得ない事情による離職で特定理由離職者と認められた場合や、自分で教育訓練を受ける場合などは、給付制限が課されないことがあります。詳細はハローワークでご確認ください。
Q. 会社都合にすると会社に不利益がありますか?
会社都合退職は、会社が受けている一部の助成金に影響する場合があるとされます。そのため会社が自己都合を主張するケースもありますが、離職理由は事実に基づいてハローワークが判定します。
Q. ハラスメントが理由なら必ず会社都合になりますか?
「必ず」ではありません。ハラスメントの事実が資料などで確認できるかどうかで判断されます。経緯の記録を残しておくことが、判定の材料になります(ハローワーク)。
Q. 退職した後でも離職理由を変えられますか?
離職票交付後でも、ハローワークでの手続きの中で異議を申し出ることができます。会社の記載に同意できない場合は、ハローワークにご相談ください。
参考文献
- ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_range.html
- ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html
本記事は一般的な情報の提供を目的としています。退職理由の判定基準・給付日数・給付制限は、改定や個人の状況により異なります。最終的な離職理由の判定はハローワークが行います。個別事案はハローワーク・労働相談窓口・弁護士等にご相談ください。

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