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結論から書きます。「社会保険給付金サポート」は国や自治体が設けた制度の名前ではなく、民間業者のサービス名です。業者が案内する給付の実体は失業保険(雇用保険の基本手当)や傷病手当金であり、どちらも本人が窓口で無料申請できます。国民生活センターは2025年12月3日、この種のサービスに正式な注意喚起を出しました。
この記事の要点
- 「社会保険給付金サポート」という公的制度は存在しない。案内されるのは失業保険・傷病手当金で、自分で無料申請できる。
- 国センの2025年12月の注意喚起は「給付額を増やせる」という勧誘が急増していることへの警告。
- 虚偽申請に加担した場合、責任は業者でなく申請者本人が負う。
「社会保険給付金サポート」とは何か
「社会保険給付金サポート」という言葉をSNS広告や退職代行のオプションで見かけることが増えています。名称の聞こえは公的制度に似ていますが、厚生労働省・ハローワーク・協会けんぽのどこにもこの名称は存在しません。民間業者が複数の公的給付をひとつのパッケージとして売り出す際の商品名であり、「退職コンシェルジュ」「給付金コンサル」などの名称で広告されることもあります。
業者が案内する給付の実体は、主に次の2種類です。
- 雇用保険の基本手当(失業給付):離職後に求職活動をしながら受け取れる給付。窓口はハローワーク(公共職業安定所)。給付日数は離職理由や被保険者期間によって異なります。
- 健康保険の傷病手当金:病気やケガで働けない状態が続いたときに支給される給付。窓口は加入する健康保険組合または協会けんぽ。
業者が給付額を増やしているわけではなく、もともと本人が受け取れるはずの公的給付の申請を「代わりにやる」という内容です。「最大◯◯万円受給できる」という訴求は、制度上の理論値を並べているだけで、業者によって給付額が変わるわけではありません。
国民生活センターが注意喚起した中身(2025年12月)
国民生活センターは2025年12月3日、「失業保険の給付額等を増やすことができるとうたう申請サポートに注意」とする情報提供を公開しました(出典)。注意喚起の中心は次の3点です。
1. 誇大な勧誘が横行している
「最大◯◯万円もらえる」「給付を最大化できる」という訴求で勧誘するが、実際の受給額は制度で決まっており、業者の介在で増えるものではありません。期待した金額と実際の受給額の差がトラブルの入口になっています。
2. 虚偽の診断書取得を誘導するケースがある
時事通信の2026年1月7日付報道(出典)では、業者に指定されたオンラインクリニックを受診し、「実際にはその病気でないのに、そう診断されるための受け答えを教えられた」という事例が紹介されています。傷病手当金の受給要件として「働けない状態」を示す診断書が必要なことを利用した手口で、虚偽の内容でハローワークや保険者に書類を提出させるものです。
3. 解約・返金でトラブルが起きている
相談が急増した背景には、高額な初期費用を支払った後の「解約時に高額な違約金を請求された」「成功報酬を後から請求された」という事例が含まれます。国センへの相談件数は2021年度の42件から2025年度(10月末時点)の216件へと増加しています。
この注意喚起は特定の事業者名を挙げるものではありませんが、「給付額を増やせる」という訴求を行う業者全般に向けた内容です。同種のトラブルを扱った記事としては退職給付金サポートは怪しい?国センの注意喚起と自力申請の話もあわせて参照してください。
法律上のグレーゾーンと、申請者が負うリスク
有償の申請代行は社労士の独占業務
雇用保険・健康保険の申請書類を報酬を得て作成・提出代行することは、社会保険労務士の独占業務として社会保険労務士法で定められています(e-Gov 社会保険労務士法)。資格のない業者が報酬を得てこれを行うと、同法に抵触するおそれがあります(違反は1年以下の懲役または100万円以下の罰金)。
サービスによっては、実際の手続きを提携社労士が担う形態もあります。契約前に「誰が手続きを担当するのか」「社労士資格者が関与しているか」を書面で確認することが重要です。
不正受給の責任は申請者本人が負う
業者の指示どおりに虚偽の受け答えをして診断書を取得し、ハローワークや保険者に提出した場合、問われるのは申請者自身の責任です。雇用保険の不正受給では、給付額の返還に加えて最大2倍の納付が命じられるため、不正受給額の合計3倍を支払うことになります(出典:厚労省ハローワーク)。重大な場合は詐欺罪の対象となることもあります。「業者に言われた通りにしただけ」という事情は免責の根拠になりません。
料金相場・契約前に確認すること
業者ごとに料金体系は異なりますが、業界内でみられる主な形態は次のとおりです。
| 料金形態 | 概要 |
|---|---|
| 月額サブスク型 | 月1〜2万円程度の定額。給付受取期間中ずっと費用が発生する場合がある |
| 成功報酬型 | 受給額の10〜30%を後から請求。給付期間が長いほど総額が膨らむ |
| 着手金+成功報酬 | 数万円の初期費用を払い、さらに成功報酬も取られる |
契約後のトラブルの多くは、解約時の高額違約金と成功報酬の追加請求に集中しています。国センへの相談でも「解約したら数十万円請求された」という事例が報告されています。
有償サービスを利用する場合は、契約前に以下を確認してください。
- 社労士・弁護士が申請業務に関与しているか(有資格者の氏名・資格番号が公開されているか)
- 解約条件・違約金の有無が書面で明示されているか(口頭説明のみで判断しない)
- 「必ず」「最大◯◯万円」という断定表現を使っていないか
- 指定クリニックへの受診を条件として求めていないか
少しでも判断に迷う場合は、契約前に消費者ホットライン(188)に電話するか、最寄りの消費生活センターに相談することをすすめます。相談は無料です。
自力で申請する方法
公的給付の申請は、業者を介さなくても自分でできます。費用はかかりません。
失業保険(雇用保険の基本手当)の申請手順
- 退職後に会社から「離職票」を受け取る(2週間程度かかる場合がある)
- 住所地のハローワークへ行き、「求職申込み」と「失業給付の受給申請」を行う
- 7日間の待期期間(全員)の後、自己都合退職は原則2か月の給付制限がある
- 説明会参加と認定日ごとの求職活動報告を繰り返す
手続きの詳細な流れはハローワーク公式(雇用保険手続きのご案内)で確認できます。給付日数・金額の計算については失業保険 完全ガイドも参照してください。
傷病手当金の申請手順
- 医師から「働けない状態である」という証明を受ける(傷病手当金申請書の医師記入欄)
- 加入する健康保険組合または協会けんぽから申請書を取り寄せる(公式サイトでもダウンロード可)
- 会社(在職中の場合)または本人(退職後の継続給付の場合)が申請書を記入して提出する
- 支給開始日から最大1年6か月間受給できる
協会けんぽの申請書と記載例は公式サイト(傷病手当金 申請書ダウンロード)にあります。退職後に申請する場合の要件についてはうつ病・退職と傷病手当金の基礎知識で整理しています。
退職後に受け取れるお金の全体像は退職後にもらえるお金 完全ガイドにまとめています。
退職後のお金の段取り(健康保険・年金・税金・生活費)を一人で整理しきれない場合、ファイナンシャルプランナー(FP)への無料相談も選択肢のひとつです。
参考文献(一次情報)
- 国民生活センター「失業保険の給付額等を増やすことができるとうたう申請サポートに注意」(2025-12-03) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20251203_1.html
- 時事通信「『うつ病』虚偽診断の誘導も 失業保険サポートでトラブル急増」(2026-01-07) https://www.jiji.com/jc/article?k=2026010700142&g=soc
- e-Gov 社会保険労務士法 https://laws.e-gov.go.jp/law/343AC1000000089
- 厚生労働省 ハローワーク 不正受給について https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_dishonesty.html
- 協会けんぽ 傷病手当金支給申請書 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/application_form/benefit/001/index.html
免責:本記事は一般的な情報提供であり、特定事業者の利用を推奨・否定するものではありません。給付の可否・金額は個別事情で異なります。個別事案はハローワーク・協会けんぽ・社会保険労務士・消費生活センター(188)へご相談ください。

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